本物の美とは何か。

 鑑賞を目的とした美術や工藝品の中に、個人性がその首座を占めるようになって久しい。殊に工藝品は、もとは日常生活における必需品としての機能と、その装飾による二つの美が同居していた。
 明治以降、日本は近代化の名のもとに西欧文明を無批判のままに導入した。美術の領域においても、作家が個性を前面に出してその美を絵画や彫刻、そして工藝で追究する考え方が、今日においては最も一般的な概念ともなっている。
 その結果、日本の美はそれ以前のものと、それ以後のものとに分離し、事実、前者は殆どが無名の、また無銘の品々に、後者はその個人の美術品のみがますます特化して行くことになる。
 藝術という今日の概念が、ただ個人性を主張するものとして、今後の日本の伝統文化に影響を与え続けて行くともなれば、我々は日本の美の本質でさえも、このまま崩壊の一途を辿るといった危惧も持たざるを得ないのである。
 この現代において、「九つの音色」は確かに個人性が主となる作家の集まりである。そしてそれぞれに自らの主張を造形という手段によって具体化しているのである。またこの九つの現象には、その豊かな伝統によって保証を受け、新しい創造へと向かうことに決して躊躇することがないのである。
 このようにして、「どのように生きるか」は個々の問題としても、「どのような日本にしたいか」が、「九つの音色」の最大のテーマとなり、むしろ日本独自の藝術の在り方というものを模索することが、この集まりとしては重要な問題となっているのである。
 「九つの音色」が、それぞれの仕事を通して、あるいはそれぞれの主張を尊重して行くことによって、「未来をデザインする」というのも、この集まりならではの存在意義を示すことになるのではないだろうか。


九つの音色 沿革
1999年   日本美術、工藝の作家が、その領域の壁を超えて集結。
2000年   「美術運動体 九つの音色」を結成。
2001年   日本橋三越にて、第1回 九つの音色展を開催。「九つの音色─父の背を見て─」刊行。
2003年   日本橋三越にて、第2回 九つの音色展を開催。「九つの音色─再美日本(ふたたびにっぽん)─」刊行。
2004年   在韓国日本大使館(広報文化院)、ソウル大学校美術大学で交流事業を開催。藝術文化振興3国共同会議を設立。
2005年   日本橋三越にて、第3回 九つの音色展を開催。「九つの音色─藝術の対話 中国 韓国 そして日本─」刊行。
2006年   中国精華大学美術学院で交流事業を開催。
2007年   全日本社会貢献団体機構の助成を受け、韓国6大学、中国3大学にて「美と心─つたえあい─」事業を実施。
日本橋三越本店にて、第4回 九つの音色展を開催。『九つの音色─つたえあい─』刊行。
     
   
2001
2001年
2003
2003年
2003
2005年
2002
2007年
2002
2009年

同人代表
 宮田 亮平   日展(評議員・審査員)、現代工藝美術家協会(理事・審査員)、東京藝術大学 学長
同人
 大樋 年雄   国際陶藝アカデミー(IAC)会員、日本文化デザインフォーラム、ロチェスター工科大学客員教授、
東京藝術大学非常勤講師、金沢大学非常勤講師
 佐伯 守美   日本工藝会正会員、文星藝術大学非常勤講師、一水会陶藝部会員
 須田 賢司   日本工藝会正会員 理事、東京藝術大学非常勤講師、日本家具道具室内史学会正会員
 田口 義明   日本工藝会正会員、 漆藝部会常任幹事
 中島 宗晧   宇都宮大学(教育学部総合人間形成課程)教授 、 東京藝術大学非常勤講師
 福王寺一彦   日本美術院同人・評議員、日本美術家連盟常任理事、I.A.A.日本委員会委員、著作権委員会
委員長、文化庁文化審議会著作権分科会委員、日本美術著作権連合理事長
 藤田  潤   日本ガラス工藝協会理事長、千葉県美術会理事
 三田村有純   日展評議員、日本現代工藝美術家協会評議員、東京藝術大学美術学部工藝科教授