雲の器
W310mm×D290mm×H270mm  
 
 
 93年から始めた「風の道」シリーズ、〇二年からの
「踊る人」に続き、同じ考え方で今年から「雲の器」を
作り始めた。制作を続けているうちに、私は、ガラスと
いう素材は「浮遊する」「漂う」「流れる」という感覚
を表現するのに相応しい素材であると気づき、風の通り
抜ける一瞬を透明感のある色と形で器にしたのが「風の
道」シリーズだった。円のまわりをまるで空中を浮くよ
うに踊り、水の中を漂うように踊る人を表わそうと思い
「踊る人」シリーズを始めた。人体というのは私達が常
に身近に見ているものなのであまりのデフォルメは奇異
な感じを与える。ガラスで表現するのは難しかったが、
ここ数年続けてきた。それから抽象的形態でない「うつ
わ」。いわゆる袋物にもこだわってきた。私が取り組ん
でいるこうしたテーマにはやはりガラスの伝統的形態の
方が相応しいと思ったからだ。
 とは言ってもただ素材に相応しいから、面白いから作
ってきたという訳ではない。やはり自分なりの人生観、
世界観を作品を通じて観てくれる人に伝えられなければ
「藝術」にはならないであろう。それに作品の品格とい
うものを大切にしたかった。
 昨秋、父が急逝し、心に穴があいたような気がしたと
き小学生の息子と久し振りに公園でキャッチボールをし
た。夕刻で風の強い日だったが、夕陽に映える雲が、刻
一刻と形を変えて流れていた。今まで見たこともない雲
が現れ、みるみる円を描き出した。その形はまるで叫ん
でいるようでもあり、微笑んでいるようにも見えた。夕
陽が後ろからあたり黄金色に輝いていた。生前は輪廻な
ど口にしたことも無かった父が死の直前、「再生する」
という意味の言葉を残して逝った。気は形を変え、大気
の中にも人間の中にも転換するのではないか、「気韻生
動」の本来の意味とは違うかも知れないが、私には「気」
が見る者の心に響きあうような気がした。

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